遺言の種類としては、普通方式の遺言と、特別方式の遺言があり、普通方式の遺言として、自筆証書遺言(968条)、公正証書遺言(969条、969条の2)、秘密証書遺言(970条~972条)があります。
実務上、自筆証書遺言、公正証書遺言が多く利用されており、以下、自筆証書遺言、公正証書遺言について概要などを説明します。

自筆証書遺言

自筆証書遺言は、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない(968条1項)とされています。そして、自書については、厳格な解釈を要する旨裁判例で判断されています(最判昭62・10・8民集41巻7号1471頁)。したがって、パソコンを用いて作成したものは自書にあたりません。

もっとも、自筆証書遺言の活用を促進する観点から、平成30年の相続法改正により、自書性の要件を緩和し、自筆証書遺言において、遺言本文に添付する財産目録については、自書することを要しない旨定められました(968条2項前段)。

かかる改正により、不動産の登記事項証明書や預金通帳のコピー等を添付し、それを目録として使用する方法もできると考えられています(法制審議会民法(相続関係)部会資料24-2 21頁)。なお、偽造等を防止する観点から、前記自書によらない財産目録を遺言本文に添付する自筆遺言証書では、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない(968条2項後段)と定められました。

また、平成30年の相続法改正により、自筆証書遺言作成後の遺言書の紛失や隠匿又は偽造を防止するため、自筆証書遺言の保管制度が創設されています。

なお、自筆証書遺言は遺言書の保管者が相続の開始を知った後、遅滞なく、家庭裁判所に遺言書を提出して、その検認を請求しなければならない(1004条1項)とされていますが、前記保管制度を利用した場合、検認の手続は不要とされています(法務局における遺言書の保管等に関する法律11条)。遺言書をしたためる

公正証書遺言

公正証書遺言は、遺言者が、遺言の内容を公証人に口授し、それに基づいて、公証人がこれを筆記して公正証書によって作成された遺言のことをいいます。

公正証書遺言は次の方式に従う必要があります(969条)。

  1. 証人二人以上の立会いがあること(969条1号)
  2. 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること(969条2号)
  3. 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること(969条3号)
  4. 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる(969条4号)
  5. 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと(969条5号)。

なお、公正証書遺言について、検認の手続は不要です(1004条2項)。遺言書

自筆証書遺言と公正証書遺言のメリット・デメリット

  1. 自筆証書遺言のメリットとしては、費用を抑えられるという点が挙げられます。一方で、デメリットとしては、方式の不備により無効となるおそれが相対的に高いことや内容が不明瞭で争いとなることが挙げられます。また、自筆証書遺言の保管制度を活用しない場合、遺言書の偽造等のおそれも相対的に高いことや検認の手続が必要となることが挙げられます。
  2. 公正証書遺言のメリットとしては、公証人が関与するため、方式不備や内容が不明瞭であることによる紛争を防ぐことができること、遺言書が公証役場に保管されることから、偽造等のおそれが相対的に低いこと及び検認の手続が不要であることが挙げられます。一方で、デメリットとしては、費用がかかるということが挙げられます。

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