遺言執行

遺言執行者は、遺言の内容を実現することをその職務とし、遺言者の意思を実現するために職務遂行すればよく、相続人の利益のために職務を行う必要はありません。

遺言執行者は、遺言により指定若しくは指定委託により選任(1006条)又は家庭裁判所により選任されます(1010条、家事事件手続法209条1項、別表1の104)。遺言執行者は、法人でもなることができますが、未成年者及び破産者は遺言執行者になることはできません(1009条)。これは、未成年者と破産者は遺言の執行という重責を担うことや他人の財産を扱うことに適任ではないと考えられるからです。

遺言執行者は、相続人との関係で、善管注意義務(644条)、報告義務(645条)、引渡義務(646条)、利息支払・損害賠償義務(647条)を負い、費用等償還請求権(650条)を行使できます(1012条3項)。また、遺言執行者は、その執行するべき遺言内容が財産に関係する場合には財産目録の作成・交付義務を負います(1011条)。

なお、遺言が相続財産のうち特定の財産に関する場合には、その財産についてのみ財産目録の作成・交付義務を負います(1014条)。そして、遺言執行者の任務が終了した場合、委任の終了後の処分(654条)及び委任の終了の対抗要件(655条)の規定が準用されています(1020条)。

遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有するとされています(1012条1項)。特定遺贈について、遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる(1012条2項)とされています。一方、特定財産承継遺言の場合、遺言執行者は、当該共同相続人が第899条の2第1項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる(1014条2項)とされています。

また、特定承継財産が預貯金債権である場合には、遺言執行者は、1014条2項に規定する行為のほか、その預金又は貯金の払戻しの請求及びその預金又は貯金に係る契約の解約の申入れをすることができる(1014条3項)とされています。

ただし、解約の申入れについては、その預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合に限るとされています(1014条3項ただし書)。もっとも、前記1014条2項、同条3項については、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、その意思に従う(1014条4項)とされており、遺言者の意思が優先する旨規定されています。遺言書をしたためた男性

遺言執行者がある場合、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができず、行為は無効となります(1013条1項、同条2項)。もっとも、これをもって善意の第三者に対抗することができない(1013条2項ただし書)とされています。

なお、相続人の債権者(相続債権者を含む。)が相続財産についてその権利を行使することは妨げられません(1013条3項)。遺言執行者がその任務を怠ったときその他正当な事由があるときは、利害関係人は、その解任を家庭裁判所に請求することができる(1019条1項)とされている一方、遺言執行者も、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる(1019条2項)とされています。

遺言執行者の報酬は、遺言者が遺言に定めることができますが、定めていない場合には、家庭裁判所は、相続財産の状況その他の事情によって遺言執行者の報酬を定めることができるとされています(1018条1項)。なお、報酬の支払時期などについては、1018条2項により648条2項、同条3項及び648条の2が準用されていることにも注意が必要です。

当事務所では、弁護士の佐藤が登記業務も対応可能ですので、遺言を残そうとされる方や遺言執行でお悩みの方はご相談いただければと思います。

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