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1 遺産分割とは

相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属します(898条)。この共有状態を解消させ、相続財産を構成している個々の財産の帰属を決めるために、遺産分割を行います。

2 遺産分割の種類

遺産分割の種類として、①遺言による指定分割、②協議分割、③調停分割・審判分割があります。虹のかかるマイホーム

①遺言による指定分割について

被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定めることができる旨定められています(908条)。ここでの「遺産の分割の方法を定めること」とは、法定相続分を前提として相続財産をどのように分けるかの指定のみならず、特定の相続財産を特定の相続人に承継させることの指定も含まれます。

後者の、特定の相続財産を特定の相続人に承継させることの指定した遺言は、平成30年相続法改正により、「特定財産承継遺言」(1014条2項)と定義付けされました。

なお、平成30年相続法改正により、特定承継遺言においても、法定相続分を超える場合には、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ第三者に対抗できないとし(899条の2第1項)、債権については、遺言の内容を債務者に通知することにより対抗要件を備えるとこととしました(899条の2第2項)。

②協議分割について

協議分割は、共同相続人・包括受遺者・相続分譲受人(以下、「当事者」といいます。)の協議により合意を形成し、遺産分割をするというものです。

協議分割では、共同相続人に対する遺贈がされている場合等でも、それに従わず、自由な分割合意をすることが理論上はできます。

協議分割は、当事者全員で行う必要があり、当事者の一人でも欠けた場合、原則無効となるので注意が必要です(これは、後記調停分割・審判分割でも同様です。)。

③調停分割・審判分割について

相続人は、遺産分割の調停を裁判所に申し立てることができます(家事事件手続法244条、別表第2の12)。調停は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所に申し立てる必要があります(家事事件手続法245条1項)。

調停においては、まず、相続人の範囲を確定し、遺産の範囲を確定します。次に、遺産の評価をし、特別受益・寄与分を確定します。その上で、遺産の分割方法の決定をし、遺産分割の成立という流れで進行するのが通常です。

審判は、調停不成立となった場合(家事事件手続法272条4項参照)等に行われます。審判は、相続開始地を管轄する家庭裁判所(家事事件手続法191条1項)又は当事者が合意で定めた家庭裁判所(家事事件手続法66条1項)に申立てをする必要があります。調停が不成立となった場合、調停の裁判所が相続開始地を管轄する家庭裁判所でない場合があり得ます。この場合、移送又は自庁処理の裁判をすることとなります(家事事件手続法9条)。

3 遺産分割の対象

遺産分割の対象は、遺産分割時の相続財産です。相続開始時の相続財産ではないので注意が必要です。

そうすると、相続開始後に処分された財産については、相続人の合意がない限り、遺産分割の対象から外されてしまうこととなります。そして、遺産分割前に遺産に属する財産が処分されたことにより損害や損失を受けた者は、遺産に属する財産を処分した者に対して、不法行為又は不当利得に基づく請求をすることが考えられます。

しかしながら、必ずしも、かかる請求が可能とはいえず、そうした場合には、遺産に属する財産を処分した者が得をするという不公平な結論となってしまいます。

そこで、平成30年相続法改正により、①遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができる(906条の2第1項)という規定、②906条の2第1項の規定に関わらず、共同相続人の一人又は数人により906条の2第1項の財産が処分されたときは、当該共同相続人については、同項の同意を得ることを要しないという規定(906条の2第2項参照)(=処分をした共同相続人の同意は不要ということです。)が創設されました。

なお、遺産の分割前における預貯金債権の行使(909条の2)の規定も平成30年相続法改正により創設されているので、注意が必要です。

4 遺産分割の時期

共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる(907条)とされています。

したがって、遺言による分割禁止(908条)などの場合を除いては、いつでも協議により、遺産分割ができるということになります。

なお、一部の遺産の帰属などについて相続人間に争いのない場合には、一部の分割を認めた方が有用であることから、平成30年相続法改正により、907条1項及び2項本文に遺産の「全部又は一部」という文言が加えられ、遺産の一部分割ができることが明記されています。

5 遺産分割の効力

遺産分割には遡及効が認められています(909条本文)。

もっとも、909条ただし書は、第三者の権利を害することはできないとしています。このただし書の規定により、遺産分割前に相続財産について利害関係を有するに至った第三者は対抗要件を備えていれば保護されると解されています。

当事務所は、遺産分割に不安のある方の味方となります。
お悩みの方は、是非一度ご相談ください。

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